CFRPの破壊包絡線

破壊包絡線とは

破壊包絡線とは、引張応力を横軸、せん断応力を縦軸にとった場合に、材料が破壊するポイントをプロットして描かれる曲線です。モール円と、モール円同士をつなぐ接線で描かれることが多いです。

英語ではFailure Envelopeといいます。

CFRPの破壊包絡線とは

CFRPの破壊包絡線は、特に何も指定がなければ普通は一方向材の強度を表します。縦軸はせん断、横軸は繊維直角方向または繊維方向のパターンがあります。

”CFRP Failure Envelope” のような単語でネット検索すれば、さまざまなグラフが見つかるはずです。そして、そのグラフには、どの破損則が一番近いか、実験値とともにプロットされているものが多いです。

実験方法は私が知る限りでは、

  • 周方向にのみ巻いた円筒をねじりながら軸方向に引張/圧縮をかける方法。
  • UD材を斜めに引張方法
  • アルカン治具(Arcan)を用いた方法

などがあります。興味があれば、調べてみてください。

知っておくと便利なこと

検索して出てくるグラフをよく見てください。

横軸が繊維直角方向の場合、

  • x=0の点、つまりせん断強度は、yが正でy=0、つまり引張強度よりもやや高い値。おおむね1.5倍程度、2倍まではいかない。
  • yが負でy=0、つまり圧縮強度はせん断強度の2倍。
  • せん断強度の最大値は、xがマイナスせん断強度のあたり。圧縮との複合でせん断強度が上がるのは不思議な感じがするかもしれませんが、内部摩擦の影響で、せん断応力単体よりも壊れにくくなっているそうです。

横軸が繊維方向の場合

  • 圧縮強度は引張強度の半分。

このようになっているはずです。これらは、覚えておくと、CAEの物性入力のときに、すべての物性が得られなくてもある程度妥当な物性として使えます。

さらに言えば

  • 熱硬化性樹脂の場合、繊維直角方向は30-70MPa
  • 熱可塑性樹脂の場合、繊維直角方向は熱硬化性樹脂の約2倍

やや決めつけすぎかもしれませんが、値の範囲として、こんなもんかなと頭に入れておけば、何かの役に立つかもしれません。当然のことながら、樹脂種、界面の接着性、樹脂じん性、繊維の分散性、含浸具合などに、値は左右されます。また、最近では樹脂が改良されていて、もっと良い物性が常識になっているかもしれません。

例えば熱硬化性樹脂で100MPaを超えたら、かなり高いほう、熱可塑性樹脂で50MPaを下回ればかなり低いほう、繊維直角方向が1GPaはありえない、などという風にイメージができるかと思います。

さいごに

ふと破壊包絡線について思い出しましたが、なかなかCFRPについてネットで参考になる記事がなかったので、書いてみました。参考にしていただけたら幸いです。

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